朝日新聞島根版の正月企画として書いた記事。
胸張って見せられる記事はこれだけだ。
この劇団「幻影舞台」,記事を書いた後,僕もメンバーの一人となり記事中にあるようにニューオーリンズ公演を実現した。

情報発信/芝居を通じメッセージ/過疎活性化へ問題提起

 「出雲人は優柔不断で実行力に乏しく、陰険で保守的、排他的で依存的。無口、無表情だ」。劇団「幻影舞台」の芝居は徹底的に出雲人をこきおろし、挑発し、批判する。

人々愛すればこそ

 閉まらない扉、きしみ傾く床、すきま風、ステージの真ん中に立つ柱。客が四十人も入れば足の踏み場もない松江市春日町の芝居小屋。島根と島根に住む人々を愛すればこそ、鮮烈なメッセージを発信し続ける。
 四年前の二月、県主催のイベントで上演する予定だった芝居が、全国的に大きな波紋を呼んだ。島根で起きた殺人事件を、警察が過疎の町おこしに利用してしまおうという内容の「ムラおこし殺人事件」。上演間際になって強烈な風刺に県は「実在の自治体の名前を出すな」と脚本の書き換えを求めてきた。県の担当課長がけいこ場まで来て、舞台は見ずに脚本に赤線を引いてばかりいた。
 劇団員が「シンさん」と呼ぶ主宰者の清原眞さん(四二)は、県の注文をはねつけた。結局、両者の主張は平行線をたどり、イベントでの公演は中止を余儀なくされた。劇団は、この経験で、過疎と地域活性化事業への問題提起というテーマに、さらにこだわって取り組みだした。鋭い瞳(ひとみ)に、ひげ。昼の自治体PR誌などの取材を通じて、都会の業者にくいものにされる島根の現状を知り、「芝居を通じて発言しなくては」と危機感を強めている。シンさんは松江市出身。初めは小説家を希望していた。東京の大学を卒業してUターン。演劇青年を主人公にした小説を書くため、取材で劇団「あしぶえ」(園山土筆さん主宰)に足を踏みいれたのが、この世界に入った最初だった。
 「あしぶえ」には二年在籍。さらに東京の文化座演出部で三年間の修業を積み、満を持して一九八一年、松江に戻り「幻影舞台」を結成した。「新しく旗上げする以上は、既存の劇団での宣戦布告のつもりでやる。」最初は、本物のオートバイで舞台を走り回るなど過激な芝居づくりを心がけた。十年間、一貫してオリジナル作品を上演してきた。今、劇団の座付き作家、演出家でもあるシンさん。

出雲弁を駆使して

 昨年十一月、清原さんが演出した「The出雲人と町おこし」でも、都会の核家族家庭にお年寄りを届ける老人宅配便や劇画の主人公「ゴルゴ13」を登場させ、出雲弁を駆使して地域活性化事業を皮肉たっぷりに描いた。十日間の公演は連日満員の盛況。県内市町村の企画担当者も関心を寄せ、すでに十二件の公演依頼がある。
 シンさんは「なぜ中央にばかり目を向ける。東京や大阪をまねるのが活性化なら、このままの方がいい。」と現代の風潮に疑問を投げかける。そして、「島根は時の流れから取り残された過疎地であるがゆえに、逆にオリジナルを作れる土壌が残っている。ここを本拠地に、積極的にメッセージを発信したい」と。
 夢は松江市と友好提携を予定する米国ニューオリンズ市での公演。「もちろん出雲弁でやります。日本とアメリカではなく、二つのローカルとして理解し合いたい」「活性化とは、元気になること」と言い切る。

*写真*
演技指導をする清原眞さん=松江市春日町の劇団「幻影舞台」芝居小屋で

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